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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)711号 判決 1967年12月21日

上告人

日新興産株式会社

右代表者

清算人

松浪新平

右代理人

河野春馬

被上告人

株式会社伊豫銀行

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人河野春馬の上告理由について。

原審の事実認定は挙示の証拠によつて肯認し得る。しかして右事実関係の下においては、上野において本件普通預金通帳は呈示しなかつたけれども、被上告銀行係員が届出の上告会社代表者印と上野が提出した払戻請求書の押印とを照合してその同一であることを確認し、かつ上野は得意先である訴外大丸タクシー株式会社において副社長松浪の下で経理主任をしており、しばしば被上告銀行に出入りし面識の間柄であること、また被上告銀行は上告会社の株式払込取扱を委託されていた関係で上野が松浪を補助して上告会社の設立事務にも従事し、その設立後は取締役の一員となつていたことなどの諸事情を知つていたので、上野には本件預金払戻請求の代権限理があるものと信じ同人の請求にしたがい本件普通預金の払戻をしたものと認められ、従つて、上野に対する弁済について被上告銀行の係員は善意かつ無過失であつたとした原審の判断は正当であり、原判決には所論の如き違法はない。それ故論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠 大隅健一郎)

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